ママとお嬢さんの月が浮かぶ天使の卵

高さ10センチほどの御位牌

3歳で天国へ行った女の子のお位牌です。

先天性再生不良性貧血(ファンコニー貧血)という病気で、

骨髄移植か臍帯血移植でしか治らない病気。

世界中を探しても絶対に見つからないHLA型で、ドナーは見つからず、

2年半もの間、輸血をしていたそうです。

そして病院で感染症にかかり、移植手術をしなければ感染症も

治らないとのことで、4/6臍帯血移植しました。

しかし、1週間後今までの大量の薬の投与などで限界を超え

お嬢さんは亡くなってしまったそうです。

工房まで、パパとママがお越しくださって、ママの描いた

デザイン画を見せてもらいました。

羽根はアニメでよく見る形で、一目で難しいなと感じました。

お位牌の上には丸い月が浮かんでいるようにしてほしいというご希望でした。

これはかなり難しい、、、と、お伝えしました。

ママの顔色は本当に苦痛に満ちていて、暗く、必死に

このデザインを希望すると伝えてこられました。

羽根は、いつもお嬢さんが点滴などを背負うのに使っていた

リュックについていた羽根の形だそうです。

月は、お名前にちなんで。

私は内心、あまり思い入れの強い方のご依頼は断りたいと思っていましたが、

ママのあまりにも必死な様子に折れて、引き受けることにしました。

月の位置は端に入れるのは難しいので、真ん中にしてほしいとお願いして、

了承いただきました。

何度も何度も作ったのですが、黄色の月がうまく丸く入らず、そのたびに

徒労に終わることが苦痛になっていた2週間後、パパからメールが届きました。

『娘の月命日に、妻も亡くなった。

最期までお位牌のことを気にして亡くなったので、

どうしても完成させてやってほしい』

という内容でした。


私はショックを受けました。

翌日からは、これまで以上に必死に制作しました。

失敗作は増えましたが、


10個近く作ってようやく心から納得できるお位牌が完成しました。

私にとって、一生忘れられないお仕事になりました。


困難なお仕事でしたが、とうとう完成させて送りました。

初めはお嬢さんだけだった戒名の予定が、お二人の連名になりました。

そしてパパは、ママの花嫁姿の写真を送ってくれました。

もう1枚、家族3人でディズニーランドで写っている写真。

マスクをしたお嬢さんと、パパもママの笑顔がはじけていました。

私がお会いした時のママとは全く別人の、本当に輝くような

笑顔の素敵な美しい女性でした。

西伊豆は、結婚する前に旅行にお二人訪ねた思い出の土地だったそうです。

その思い出の地に、お嬢さんのお位牌を頼みに来るなんて、、、

どんなに辛い道中だったかと思います。

いつかパパが、この西伊豆に再び足を運んでくださる日が来ると良いなと願っています。

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