貝殻が好きだった息子さんの仏具

9月の浜名湖アートクラフトフェアでのわたしのブースで、

サザエグラスに見入る方がいらっしゃいました。

何度も触っては、離れてみたり、奥様と話し合っていらっしゃいました。

そのうちに、他の作品に挿してあったお香を持ってきて、

グラスに入れ、そのお香を取り出す仕種を繰り返していらっしゃいました。

一体、何に使うんだろう、、、

怪訝そうな私に、

『お線香を入れるのに、ちょうどいいなあと思いまして、、、(^-^)』

と、おっしゃいました。

過去に、お花を入れる、、、という方にはお会いしましたが、

お線香を入れるという方は初めてで、驚きました。

『いやー、角度が、ちょうど良いなって、、、』

なるほど、、、

側では小学生の可愛らしいお嬢さんが、小さなワンちゃんとずっと待っていました。

奥様が、

『貝が好きだったから、、、ね?』

と、小さくおっしゃいました。

どなたの仏具なんだろう?

貝が好きだなんて、大人ではないだろうなあ、、、

と、何となく感じました。

気づくとワンちゃんが私の足元にやってきて、ものすごくリラックスしたように

足をうんと伸ばして、ぺったり座り込みました。

お二人は、サザエグラスをお求めくださいました。

仏具やお位牌も制作しますよとお話ししたら、『本当に?』と

すぐにでも、西伊豆へ相談に行きたい!と、おっしゃるので、

子ども達の運動会が済んだら、いつでもどうぞ。とお伝えしました。

早速次の次の日曜日、吹きガラス体験も兼ねて、FAROへお越しくださいました。

楽しそうにガラスを吹かれ、

『こんなに大変な手間をかけて、ひとつずつ作っているんですか?』

とご主人は、とてもびっくりされていました。

香炉と、燭台を作ることになり、山のような没作品の中から、

色やデザインを話し合って決めました。

燭台の没作品を眺めていたご主人が、

『ほら、これ、中に貝殻が入っているみたいだよ!』

と、奥様に見せていらっしゃいました。

思い切って、どなたの仏具か尋ねてみました。

六歳の息子さんを、脳の病気で亡くされたばかりだと話してくださいました。

あぁ、だからお姉ちゃんの目の奥にも、暗いものが見えたんだと理解しました。

『香炉に、ビー玉を付けることはできませんか?』

と、奥様がおっしゃいました。

ビー玉で、いつもお父さんと遊んでいたそうです。

ビー玉を付けるのは、難しいけど、ビー玉のような足をつけることは

できますよ。と御提案して、デザインは決まりました。

難しいと思ってトライした香炉は、意外にすんなりできました。

一方、簡単に考えていた燭台が、かなり難しく、苦労しました。


初めてのデザインで、カップの部分のつけかたがいつもと違い、

綺麗に仕上がらないし、外側の模様をねじるデザインで、

内部までも変にねじれてしまい、ご主人がつぶやいていた

『貝みたい』

というには程遠くなったり、、、

結局、3回失敗して、4回目にやっと納得いくものになりました。

こうして、完成作品をご家族の元へ送りました。

奥様から、後日メールが届きました。

想像していたとおりにできていて嬉しかったこと、

息子さんが亡くなってから、久しぶりに出かけた先のフェアで、

サザエグラスと出会ったことが書かれていました。

使っていらっしゃる様子を、お写真で知らせてくださいました。

まだまだ悲しみは続くと思いますが、楽しかった思い出を

偲ぶ品になって欲しいと思いました。

世界でたったひとつのガラスのお位牌と仏具

大切な家族、ペットとの何気ない日々、忘れられない笑顔、情景を思い出せるカタチ。 黒塗りのお位牌や金属の仏具ではなく、柔らかな色合いの澄んだガラスで、そんな想いをあなたの代わりに製作いたします。