家族写真
今日の午前中は、若いご夫婦がお越しになりました。
誕生死のお子さんのお位牌のご相談にみえたのです。
挨拶をして、ではどういうデザインをご希望ですか?と尋ねながら進めていくと、ご主人が自然に、お子さんをどういう経緯で亡くしたのかを話してくださいました。
「実は先月の、、、」
と、ご主人の口から言葉が出たとたん、奥様はもう涙がポタポタと止まらず、私も思わず泣いてしまいました。
破水して、陣痛促進剤を打ち、陣痛に耐えたのですが、なかなか生まれてこず、「ちょっと休みましょう」という流れになったころ、今度はお腹の中の赤ちゃんに異変が起こり、急きょ帝王切開を試みたのですがすでに遅かったのだそうです。
私も、お兄ちゃんの時に同じように前期破水で促進剤を打ったので、どんなに陣痛が苦しいか知っています。
苦しい思いをした後、手術して、赤ちゃんの泣き声が聞けなかったなんて、本当に辛すぎます。
お写真を見せてくださいました。
実は、こんなにお位牌を作っている私ですが、天使ちゃんの写真を見せていただくのは初めてです。
唇が紫色にはなっていましたが、本当に眠っているような、丸々とふっくらとしたかわいい男の子でした。
誰もが子どもの誕生の時に病院で撮ってもらうのと同じように、ママに抱っこされて、パパも写真に入るように横から顔をのぞかせて、3人一緒の写真。
だけど、ママもパパも目を真っ赤にして泣いています。
「こんなに大きかったんだね~もうちょっとだったね~」
と、思わずつぶやいてしまいました。
「パパそっくりですね!」
と言うと、うれしそうに笑ってくれました。
アルバムをめくると、次の次の写真は、さっきと同じ3人の写真でしたが、今度はパパもママも微笑んでいます。
とっても素敵な笑顔で、赤ちゃんも微笑んでいるように見えました。
3人一緒に笑う初めての写真が、3人一緒に笑う最後の写真。
気づくと、パパも泣いていました。
3人で涙を拭いて、デザインの話に入りました。
オレンジ色と、青を使いたいと、パパの希望。
元気なイメージにしたいとおっしゃるので、だったら暖色系に絞って、進めては?と言う提案を呑んでくださいました。
レモン色と、オレンジをチョイスして、どんな風がいいか、簡単なスケッチをお見せしました。
とりあえずやってみて、気に入らなければ、また違う取り合わせでやりましょうということになりました。
香炉も合わせて頼みたいとおっしゃったので、これも色を選んでくださいとお願いしました。
どうしようか、、、何色がいいかな?
とお二人で悩んでいました。
台の形もこんなのもあるんですよと、ご提案するとパパが
「俺にはわからないから、こういうのは、ママに、、、」
と、奥様に振りました。
生身のお子さんのパパとママにはなれなかったけど、ちゃんと天使ちゃんのパパとママなんだなと、とても感動しました。
きっと、またいつかお子さんに「パパ!ママ!」と呼んでもらえる日が来るといいなと思いました。
1時間以上にわたって、あれこれご相談しました。
帰り際、ご主人がふと思い出したように話してくださいました。
「手術中、控室にいたんです。
そしたら、手術室から「ギャー」って鳴き声が
聞こえたんで(あ!生まれたかな?)って思ったんです。
後で聞いたら、「そんな声、上げてない」って言われて、、、」
誕生死ですから、赤ちゃんは産声を上げるはずがありません。
だけど、きっとパパに「生まれたよ!」って知らせたかったんですね。
自分たちの赤ちゃんが、生まれてくることだけしか考えていなかっただろうお二人。
今はただ、悲しみと苦しみを2人で乗り越えようとする
愛の深さを、去っていくお二人の背中に見ました。
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