覚悟

今日は、3歳で亡くなったお子さんのお位牌を依頼に、神奈川からお客様がお越しくださいました。

事前に、卵の上に3つの光を意味する黄色を入れた、青いものをご希望でした。

試しに、どんな風になるか制作してみましたが、3度やり直しても納得いく出来にはならず、お客様に画像を送って見ていただきました。

写真ではやりあまり分からないということで、今日直接お越しになりました。

わざわざお菓子まで頂きました。

実物をご覧になって、やはり思っていたものとは違ったようで、1時間ほど相談して、結局全く別のものになりました。

私が事前に作っておいたお位牌は、結局無駄になったわけですが、私はこの試作に対しての

請求はいつもしません。

全く失敗のないこともありますが、大概2個以上、ひどい時は5個以上トライしてはボツになります。

かかった手間と、原材料や燃料費を考えれば、かなりの損失です。

けれど、私の経験値の幅がまた広がったと考えるようにしています。

お客様の心の中にあってモヤモヤした形を、可能な限りガラスにして差し上げたいと、

納得するまで本当に必死に制作しています。

だからこそ、お客様にも同じように覚悟を持ってご依頼して欲しいと考えています。


『オーダーしてるんだから、デザイン画通り作ってよ!』

『私が考えていたのと違うじゃない!』


と言われたこともありました。

正直、吹きガラス技法では、デザイン画通りにできることの方が稀です。


それでも良いから、あなたに頼みたいというお気持ちが

ある方だけのお仕事をしたいと、最近特に思います。

実際のところ、どんな風に出来上がるか分からない、、、

それでも出来上がったものは、私が誠意を持って作ったものだから、受け取ってくださる方にだけ、、、

私にとって、お位牌の仕事は本当に苦しみの連続です。

体調を崩すことも、時々あります。

私がこだわり過ぎるのが原因ですが、主人には、


『なんで、坊さんでもなんでもないお前がそんな思いをして作らなくてはならないんだ?

そもそも、そんな思いを込めたら、いけないものなんじゃないか?』


と、注意されます。

私もそう思います。

けれども、悲しみの底にある方は、やはり同じような思いを私にも求め、お位牌の中に

こめてほしいと願っているように思います。

その想いに寄り添って、形にしてくれるのはここしかない!

と、思って、皆さんご依頼になるのだと思っています。

でなければ、その辺の機械的に名前を入れるだけのもので構わないと思いますし、私にとってもその方がどれだけ良いかと思うこともあります。


私の本気の想いと、ご依頼者様の覚悟、、、

その気持ちがピタッと合った時だけ、デザイン画通りの、ご依頼者の目から涙が溢れるお位牌になると知っています。

そうならなかったときは、どちらかに覚悟が足らなかったのだということだと思います。

今日のお客様にも、お伝えいたしました。

納得してくださいました。

『こちらと出会わなければ、黒塗りのお位牌になるところでした。

できあがってきたものが、我が子のお位牌だと思っていますから、ぜひお願いします。』

そうおっしゃって、遺影を見せてくださいました。

可愛い笑顔を見て、2人で泣きました。

私も真摯にその想いと向き合います。

ある日突然、父親の手で未来を摘み取られた、3歳の可愛い坊やの為に、、、


世界でたったひとつのガラスのお位牌と仏具

大切な家族、ペットとの何気ない日々、忘れられない笑顔、情景を思い出せるカタチ。 黒塗りのお位牌や金属の仏具ではなく、柔らかな色合いの澄んだガラスで、そんな想いをあなたの代わりに製作いたします。