天使の休息

2016年春。


電話に出ると、お位牌のご相談だった。

2008年に12歳のお嬢さんを突然亡くされ、私にお位牌と仏具をご依頼になった方だった。

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その直後に、後を追うように13歳の猫が天国へ。

そのお位牌も作らせていただいた。

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それから8年。

今度は、まだ49歳のご主人が亡くなったので、お位牌をお願いしたいと奥様からだった。

まさか、、、

あまりのことに、一瞬声が出なかった。

私にお位牌を頼もうと決めたのは、ご主人だったそう。

そうだ、明るい声で電話をかけてこられた。

そして、お嬢様のお位牌もピンクの仏具も猫のお位牌も、みな気に入ってくださっていたそう。

だから、ご本人のお位牌も私に託したいとお考えになったのだと奥様はおっしゃった。

できる限りのことをしたいと思ったけど、届いたデザイン画がどう見ても厳しい。

できるまでに、何度もやり直ししなくてはいけないと、一目でわかった。

私じゃなくて、何処かほかのお位牌をお選びになられた方が、、、と、尻込みする私に、

奥様は『難しいのはよくわかる。でも、、、実は、、、』

と、事情を説明してくださった。


『娘を亡くした後に産まれた、今年6歳になる娘がパパは天使になってお休みしてるんだと...

火葬することを嫌がり、しないと天使になれないんだと言ってしまった私も悪いのですが...

遺影の前で天使になれて良かったね。いっぱい寝てねの言葉を聞くと

天使の休息のイメージをどうしても諦めることが出来ません。

娘の天使の卵と同じ大きさの羽根として休息の雰囲気を出すことは出来ませんか?』


これを読んで、私の覚悟が決まった。

絶対に作って見せる

とはいえ、とにかく難しかった。

本体にくっつける形で大きな羽根を付けたのだけど、最初は左右対称に付けられず、4回も付けたり切ったりを繰り返して、結果上手くいかず、、、。

続く2個目は冷ましの時に歪が生じて割れた、、、

3個目、何とか完成させたお位牌を、翌日窯から出して見た時(ああ、これだ)と思った。

画像を見たお嬢さんが、『かわいい、、、』と言ったまま、涙ぐんで固まったとお返事いただいた。

文字彫刻も、細かくやりとりして、ご希望通りに彫った。

完成品の画像をお送りしたところ、お嬢さんが感激して涙を流し、スマホを話してくれなかったので、メールの返信が遅くなったとおっしゃってくださった。


一緒に、「いつも想っているよ」の石文と、お水を供えるグラスを頼まれたので同送した。

お礼のメッセージと共に、お位牌コーナーの画像を送ってくださった。

ご主人のお位牌、お嬢さんのお位牌、猫のお位牌。

そして2段に分けて仏具が。

私が作ったものがこんなにも、、、

悲しみが目に見えるようで辛かった。

世界でたったひとつのガラスのお位牌と仏具

大切な家族、ペットとの何気ない日々、忘れられない笑顔、情景を思い出せるカタチ。 黒塗りのお位牌や金属の仏具ではなく、柔らかな色合いの澄んだガラスで、そんな想いをあなたの代わりに製作いたします。